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土葺き工法による瓦屋根のメンテナンス方法について解説

2024/02/27

土葺き工法による瓦屋根のメンテナンス方法について解説

かつて主流だった屋根工法の一つに「土葺き工法」があります。この伝統的な方法は、様々な要因により近年その使用頻度が大幅に減少しています。しかし、その独特の特性を評価し、依然としてこの工法を選択する施工者も存在します。

本記事では、土葺き工法の特徴と、この工法を採用した屋根のメンテナンス手法について詳しく解説していきます。歴史ある技術の現代における位置づけと、その維持管理の重要性を理解することを目的としています。

土葺き工法は伝統的な屋根工法


ここでは、日本の建築史に深く根付いた土葺き工法について詳しく解説します。

土葺き工法は、昭和初期まで日本の屋根工事で広く採用されていました。この方法は、その特性から「湿式工法」としても知られています。

施工手順は以下の通りです。

  1. 屋根の骨組みに野地板を敷設
  2. 野地板の上に土を均一に敷き詰める
  3. 土の上に瓦を配置し、固定

野地板には、当時は主に杉のバラ板が使用されていました。

土葺き工法の主な分類

土葺き工法は主に「ベタ葺き」と「筋葺き」の2種類に分けられます。

ベタ葺きは、野地板全体に土を敷き詰める方法です。この方法は、瓦の安定性を高め、優れた断熱効果を提供しますが、使用する土の量が多いという課題があります。

一方、筋葺きは屋根の谷部分のみに土を配置する方法で、使用する土の量が少ないため、屋根全体の重量を抑えることができます。

土葺き工法の長所と短所

土葺き工法の主な利点は、瓦の安定性を高めることです。大量の土が瓦を押さえつけるため、強風時でも瓦が動きにくくなります。

さらに、土の層が断熱材の役割を果たし、建物の温度管理に貢献します。

一方で、この工法には重大な欠点があります。屋根に大量の土を載せることで、建物全体の重量が著しく増加します。

この重量増加は、建物の構造に大きな負荷をかけます。特に地震の際、この重さが致命的な弱点となり、建物の倒壊リスクを高めてしまいます。

近年、土葺き工法の使用が急激に減少

土葺き工法は古くから使われてきた伝統的な屋根工法ですが、近年の日本ではその姿を見かけることが稀になってきています。

この減少の主な原因は、「屋根が重いため地震に弱い」という構造的な欠点にあります。

特に関東地方では、1923年の関東大震災時に土葺きの屋根が多数落下し、甚大な被害をもたらしました。この経験から、関東地方では以降、土葺き工法の使用が激減しました。

一方、関西地方では大規模な地震が比較的少なかったため、土葺き工法が継続して使用されてきました。しかし、1995年の阪神・淡路大震災で深刻な被害が発生したことを契機に、関西地方でも急速に使用が減少していきました。

土葺き工法から現代の屋根工法への進化

伝統的な土葺き工法は、時代とともに新しい技術に取って代わられてきました。ここでは、現在主流となっている屋根工法について解説します。

軽量化を実現した引掛桟瓦葺き工法

この工法は、屋根の重量を大幅に軽減しつつ、瓦の美しさを保持しています。棧木に瓦を引っ掛けて固定するため、建物への負担が少なくなります。

耐風性に優れたポリフォーム工法

強風地域で開発されたこの工法は、特殊な接着剤を使用して瓦を固定します。台風やハリケーンなどの厳しい気象条件下でも瓦の脱落を防ぐ効果があります。

安全性を高めたガイドライン工法

この工法は、既存の引掛桟瓦葺き工法を改良し、より厳格な基準を設けたものです。瓦の固定方法が強化され、以前よりも多くの釘を使用することで安全性が向上しました。最新の基準では、強風に対する対策が義務付けられるなど、さらなる改善が進んでいます。

土葺き工法における耐震性の課題

既存瓦、屋根土撤去

土葺き工法は安定性と高い断熱性を提供しますが、屋根の過度な重量が大きな問題となっています。「土」と「瓦」の組み合わせにより、建物全体に大きな負荷がかかります。

現代の耐震改修の主な目的は屋根の軽量化です。地震発生時、重い屋根は建物の揺れを増幅させ、構造体に過度のストレスを与えることで、倒壊リスクを高めます。

対照的に、軽量屋根は地震時の揺れを抑制し、建物への負担を軽減します。そのため、従来の重い瓦屋根から軽量な金属屋根への改修が急増しています。この傾向は、建物の耐震性能を大幅に向上させる効果的な方法として広く認識されています。

瓦屋根の魅力を保ちつつ安全性を高めるには防災瓦がおすすめ

近年、屋根の軽量化が進む中でも、伝統的な瓦屋根の美しさを求める声は依然として存在します。そんな方々のニーズに応えるのが「耐災害性瓦」です。

この革新的な屋根材は、従来の瓦の外観を維持しながら、重量と耐久性を大幅に改善しています。特殊な粘土を使用し、防水性能も向上させているため、厳しい気象条件下でも高い信頼性を発揮します。

耐災害性瓦の特徴的な固定方法は、その性能をさらに高めています。各瓦に装備された特殊な連結機構により、瓦同士が強固に結合します。さらに、専用の固定具で下地に確実に取り付けることで、強風による脱落や移動のリスクを最小限に抑えています。

この新世代の瓦は、従来品と比較して大幅な軽量化を実現しており、建物全体の耐震性能向上にも貢献します。伝統的な美しさと現代の技術を融合させた耐災害性瓦は、瓦屋根の未来を切り開く革新的な選択肢と言えるでしょう。

▷参考記事:地震や台風に強い!防災瓦の種類や特徴を解説

瓦屋根リフォームの工程とポイント

屋根のメンテナンス時に瓦屋根を新しくする際の主要な作業手順を解説します。

古い屋根材の撤去と基礎部分の点検

まず、既存の屋根材を慎重に取り除きます。瓦を順序よく撤去し、その下の土層も完全に除去します。

次に、露出した下地(杉皮や野地板など)の状態を綿密に調査します。劣化や損傷が見られる部分は、新しい材料と交換します。

野地板を更新した後、防水性能を高めるために防水シートを敷設します。この工程だけでも雨漏り対策は大幅に向上します。

新しい瓦の設置手順

最新技術を採用した耐災害性瓦の使用を提案します。これらは従来型と比べて軽量で耐久性に優れています。

各瓦は特殊設計により相互に連結するように配置され、高い安定性を実現します。さらに、耐腐食性の高い固定具を使用することで、自然災害への耐性が向上します。

このように、新しい瓦を一枚一枚丁寧に配置し、確実に固定していきます。

屋根の軽量化リフォーム

近年、建築業界では耐震性向上のため、重量のある伝統的な屋根工法から軽量な素材への移行が進んでいます。特に、土葺き工法の瓦屋根から現代的な金属屋根への変更が一般化しつつあります。

ここでは、このような屋根改修の過程と、選択可能な新しい屋根材について詳しく見ていきましょう。

最新の金属屋根材

現在、屋根材として注目を集めているのがガルバリウム鋼板です。この素材は、軽量性、耐久性、防錆性に優れ、長寿命という特徴を持っています。従来のトタン屋根と比較すると、その性能は格段に向上しています。

さらに、最新技術を結集したエスジーエル鋼板も登場しました。この新素材は、ガルバリウム鋼板の特性をさらに向上させ、今後の主流となる可能性が高いと言えるでしょう。

一般的に、瓦屋根から金属屋根への変更で重量は約1/10に軽減されます。特に土葺き工法の場合、この軽量化の効果は劇的です。

金属以外の軽量屋根材

金属屋根以外にも、様々な軽量屋根材が開発されています。これらの新素材は、高い防水性、紫外線耐性、耐衝撃性などの特徴を持ち、従来の瓦屋根よりも軽量で耐震性に優れています。

また、屋根材の性能を更に高める高機能塗料も注目されています。これらの塗料は、紫外線防御、防水性強化、耐久性向上などの効果があり、軽量屋根材と組み合わせることで、より効果的な屋根改修が可能となります。

塗料を使用する場合は、その耐用年数に応じた定期的なメンテナンスが重要です。適切な管理により、屋根の寿命を大幅に延ばすことができるでしょう。

まとめ

現代の建築では、地震対策の観点から屋根の軽量化が重視されています。

歴史的に広く採用されてきた土葺き工法ですが、大規模な地震被害を契機に、その使用頻度は大幅に減少しました。特に、関東大震災後の関東地方や阪神淡路大震災後の関西地方で、この傾向が顕著に見られます。

土葺き工法は優れた断熱性を提供しますが、屋根全体の重量が増すため、耐震性の面で課題があります。そのため、多くの建物所有者は改修時に軽量な金属屋根などへの変更を選択しています。

しかし、伝統的な瓦屋根や土葺き工法の外観を維持したい場合は、最新技術を活用した防災瓦の使用が推奨されます。これにより、伝統的な美観を保ちつつ、耐震性能を向上させることが可能です。

この記事は私が監修しました

株式会社エーストラスト 代表:高橋 輝(たかはし あきら)

株式会社エーストラスト 代表:高橋 輝

19歳の時に屋根職人の道へ。それ以来大阪を中心に屋根工事・建築板金・雨樋工事など屋根に関わる施工に従事してきました。「雨漏り診断士協会」認定の「雨漏り診断士」や、「石綿作業主任者」など各種資格取得。常にお客様の視点にたち、細部まで確実丁寧な施工にこだわっています。

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