雨漏りに強い立平葺きとは?特徴とメリット・デメリットを解説
2023/05/24
雨漏りする場所でもっとも多いのが、天井です。
天井から水がしたたるということは、屋根に問題があるということ。屋根材が破損していたりめくれていたりすると、そこから雨水が侵入して雨漏りにつながってしまうのです。
雨漏りのリスクを少しでも減らすなら、立平葺きがおすすめです。
立平葺きの特徴や、メリット・デメリットなどを解説するので、ぜひリフォームの参考にしてください。
立平葺きとは
立平葺きとは、金属屋根の葺き方の一種です。
立平葺きの大きな特徴は、一枚の長い板金でつくられているということ。継ぎ目がないので、途中で剥がれたりめくれたりといったリスクがありません。そのため、雨漏りに強い屋根材として注目を集めています。
縦に長く葺くため、「縦葺き」「縦平葺き」などと呼ばれることもあります。
また、立平葺きの住宅は地震に強いともいわれています。板金にはガルバリウム鋼板を使っているため、とても軽量。住宅への負担が最小限になるため、万が一地震が起きても揺れが緩和されるでしょう。
立平葺きは大きく分けて2種類
立平葺きは、主に「ハゼ葺き」「嵌合式」の2種類に分かれます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ハゼ葺き
ハゼ葺きとは、しろを重ねて固定する方法です。板金の横に折り曲げるしろを作って、それを隣接する板金に重ねて、曲げたうえで固定します。
なお、工法によっては「堅ハゼ」「縦ハゼ葺き」などと呼ばれることもあります。
嵌合式
嵌合式は“ひし形”がポイントです。
板金の横がひし形になっているので、それを隣接する板金のひし形部分に重ねて、はめ込んでいきます。
なお、工法によっては「嵌合式立平」と呼ばれることもあります。
立平葺きのメリットとデメリット
立平葺きは一枚の長い板金で構成されているので、継ぎ目のある屋根材と比較して雨漏りのリスクが低めです。
しかし、デメリットもあるのでご注意ください。
立平葺きのメリットとデメリット、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
立平葺きのメリット
■雨漏りに強い
先にお伝えした通り、立平葺きは一枚の板金で構成されているため、雨漏りの発生率が低めです。
雨漏りは、屋根材の下に雨水が侵入することで起こります。「雨漏りに気づいて業者に確認してもらったら屋根材がめくれていた」……というようなケースは決して珍しくありません。
屋根材同士の継ぎ目がなければ、雨水の侵入ルートもないということです。立平葺きなら、すき間がなく排水性も高いので、悪天候の日でも安心でしょう。
■耐震性が高い
屋根に重量があると、それだけ地震の影響を受けやすくなります。地震が起きたときに大きく揺れたり、建物にヒビが入ったり倒壊したりなど、まさかの事態になったら大変ですよね。
ガルバリウム鋼板製の立平葺きは、瓦屋根などと比べて軽量です。
建物に負担がかからないので、地震対策用の屋根材としても注目を集めています。
■耐用年数が20年以上
立平葺きは金属屋根の一種ですが、ガルバリウム鋼板には防食作用があります。
メンテナンスの頻度や環境によっても異なりますが、一般的な耐用年数は20年以上。もらいサビがあっても広がりにくいので、きれいな外観を長くキープできるでしょう。
■リーズナブルに施工できる
立平葺きに使うガルバリウム鋼板は、材料費が安めです。天然スレートや瓦屋根などと比較して、かなりリーズナブルに施工できるでしょう。
耐用年数が20年以上ということもあり、コストパフォーマンスに優れた屋根材といえそうです。
■工期が短い
たとえば瓦屋根の場合、その場で職人が1枚ずつ貼り付けなければなりません。少しでもすき間ができるとそこから雨漏りしてしまうので、慎重な確認と微調整も欠かせないでしょう。
立平葺きの場合、使うのは1枚の板金だけ。工場ですでに加工したものを現地で貼って、施工完了です。つまり現場での作業が少ないため、最小限の労力で済み、工期も短め。生活はもちろん、近隣への配慮の視点からも助かりますね。
■メンテナンスの手間がかからない
立平葺きは、凸の部分に心木が使われていません。すべて金属だけで構成されるので、木材にありがちな腐敗リスクはゼロ。
メンテナンスには何かと費用がかかるので、施工費の安さと合わせても、かなりお得な屋根材といえるでしょう。
■カバー工法で施工できる
立平葺きは、リフォームの際にカバー工法で施工できます。屋根材が軽量なので、既存の屋根材の上にそのまま乗せても問題ないのです。
葺き替えだと、既存の屋根材を撤去しなければなりません。それだけ労力がかかりますし、撤去費用もかさみます。カバー工法を活用して、かしこくリフォームしてください。
■緩勾配にも使用できる
立平葺きは、0.5寸などの緩勾配にも使用できます。
一般的な屋根は2寸程度ですが、ほぼフラットに近い形状でも施工できるので、さまざまな建物に採用されています。
傾斜がゆるい建物では、屋根部分に雨が溜まりやすく、それが雨漏りにつながることがあります。しかし立平葺きなら継ぎ目がないため、屋根材の途中で雨水が入り込むことはありません。「緩勾配の屋根にしたいけれど雨漏りが心配」という方でも、立平葺きなら安心して施工できそうです。
■曲面にも使用できる
立平葺きは曲面にも使用できます。
かまぼこ屋根に使われているのは、大半が立平葺き。
デザイン性と機能性を低コストで両立できるのは助かりますね。
立平葺きのデメリット
■使用に向かない屋根がある
立平葺きは曲面にも使用できますが、複雑な形の屋根(棟や谷部分が何箇所もある屋根など)には向いていません。
切妻屋根などシンプルな屋根の形状に向いていますが、例えば多面体や寄棟屋根には向いていません。
寄棟などを施工する際に、寄棟部分を全部カットして立ち上げていく必要があるため工数がかかってしまいます。
立平葺きは0.5寸の緩い勾配から葺くことができますが、急こう配の屋根に葺くとすべるため危険になります。
「うちの屋根は施工に向いているのか?どんな屋根が向いているのか?」と気になったら、まずは業者にご相談ください。
■室内が暑くなりやすい
立平葺きは金属屋根の一種なので、外気の影響を受けやすい特性があります。
特に夏場は室温が上がりやすいのでご注意ください。
断熱材や遮熱塗料などを使えば影響を緩和できるので、立平葺きへのリフォームをお考えでしたら、合わせて検討することをおすすめします。
■雨音が響きやすい
立平葺きに限らず、金属屋根の弱点ではあるのですが、雨音が室内に響きやすいかもしれません。感じ方は人それぞれですが、瓦屋根と比較すると音の差は大きいです。
遮音性が高い塗料も施工できるので、こちらも合わせて検討するのが良いでしょう。
■工事にスペースが必要
立平葺きは一枚の長い板金を使います。
それだけ作業スペースが必要なので、住宅密集地などにお住まいの方はご注意ください。
また長尺の屋根材を荷上げする際には人数が必要になることもデメリットの一つです。
業者によっては、敷地外で作業するなど、別の案で対処してくれることもあります。「うちは狭いから無理だろう」とあきらめず、まずは業者にご相談ください。
立平葺きの施工方法
立平葺きは、一枚の継ぎ目のない長尺の板金を施工していくのが特徴です。
過去の施工事例をもとに施工方法を簡単にご紹介します。
一般的な戸建ての場合、材料屋さんが加工して現場に持ってきてくれるので、それを荷上げして施工していきます。
もしも屋根の尺が20mを超えるような工場などの大きな現場や、現場に大きなトラックが入れないような現場では現場で成型をします。
【現場成形参考動画】
まずは既存の役物を撤去します。
カバー工法ですので、上からルーフィングを張っていきます。
立平の屋根材を施工していきます。
写真のように、棟部は水の侵入を防ぐため、端部を一枚一枚立ち上げています。
こちらが完工の様子です。
こちらの現場は勾配が急でしたので、滑りやすく、また立平は傷がつきやすいため慎重に施工をいたしました。
まとめ
立平葺きは、1枚の長い板金で構成されているのが特徴です。
継ぎ目がなく、心木も入っていないので、雨漏りや腐敗のリスクはほとんどありません。
雨漏りに強い屋根材をお探しなら、ぜひ立平葺きをご検討ください。
エーストラストには、立平葺きの施工に長けた職人が多数在籍しています。
異常気象がさけばれる昨今、台風や暴風雨をきっかけに雨漏りする事例が数多く見られます。下地ごと交換するとコストがかかってしまうので、最初から雨漏りのリスクを減らすのが一番でしょう。
立平葺きにリフォームして、ぜひ雨漏りに強い住宅をつくりましょう。