折板屋根とは?特徴メンテナンス方法を解説
2023/07/28
屋根には色々な形状のものがあり、それぞれに特徴があります。
屋根の形状によってはメンテナンス方法が違う場合もあるので、その屋根に適した対応をすることが重要です。
ここではそんな屋根の中から「折板屋根」について特徴やメリット、デメリットなどと合わせて紹介していきたいと思います。
折板屋根とはどういったものか
折板とはガルバリウム鋼板、亜鉛メッキ鋼板、塩ビ鋼板などの金属製の屋根を折り曲げて加工した屋根材のことを指しています。
金属板を波型に成形した上で葺く工法で、工場や倉庫の屋根、駐車場、駐輪場、物置などに多く使われています。
昔はトタン板が使われることが多かったのですが、コストが高い、防音性が低いといったことから近年ではガルバリウム鋼板が使われることが多くなっています。
少し前までは工場などでは「波型スレート」の屋根が多く使われていたのですが、2004年以前に設置されたスレート屋根にはアスベスト(石綿)が含まれていることや、スレート素材は水分が吸収されにくく雨漏りが起きやすいといった理由から金属製の折板屋根を利用することが増えてきています。
折板屋根は屋根の横方向に向かって屋根と屋根のつなぎ目があるのですが、縦方向、傾き方向に向かってはつなぎ目はありません。
傾き方向につなぎ目がないために折板屋根は屋根1枚の長さが長くなくことが多くなっています。
折板屋根の種類とは
一般的に使用される折板屋根には4つの種類があります。
それぞれの種類によってつなぎ目の方法が変わり、その種類ごとに改修方法も違ってきます。
これは施工費用にも関わってきます。
ここではそれらの4つの種類について紹介していきます。
重ね式折板屋根
折板屋根の中でも多く採用されているのがこの「重ね式」の折板屋根です。
こちらは取付金具と鋼板、もしくは鋼板同士をボルトで固定するというものです。
屋根の外側に向かってボルトが露出した形になるため、経年劣化によって錆びていくことがあります。
車庫や物置などの比較的小さい建物で多く使われる工法で、耐風性に優れた工法なのですが、ボルト部分については定期的にメンテナンスをする必要があります。
はぜ締め式折板屋根
こちらは取付金具を鋼板に直接固定するのではなく、鋼板の継ぎ目を折り曲げてつなぎ合わせるという工法です。
重ねタイプのようにボルトが露出しないため、雨漏りのリスクは低くなるのですが重ねタイプよりも風に弱いという特徴があります。
はぜ式折板屋根
こちらも取付金具を鋼板に直接固定するのではなく、吊り金具を使用することで固定するという工法です。
鋼板に穴を開けたり、加工したりしないために見た目が良いというだけでなく、施工性、防水性、防風性が優れている工法です。
工場や倉庫などのような大きな建物で使用されることが多い工法です。
嵌合(かんごう)式折板屋根
こちらはキャップを取り付けて左右から鋼板をつなげるという工法です。
鋼板のつなぎ目はキャップでおおわれるようになっており、見た目も機能性も優れたものとなっています。
ただ、他のタイプのものよりも施工費用が高くなりがちというデメリットがあります。
折板屋根のメリット
折板屋根には色々な特徴があることでそれがメリットにつながっています。
ここではそれらのメリットについて順に紹介していきます。
加工しやすく工事期間が短い
折板屋根は施工性が高いというのが特徴です。
使用されるガルバリウム鋼板などの鋼板は加工がしやすく、組み立てやすいものとなっています。
また、一般的な屋根工事では屋根材の下に野地板を葺いて屋根材を固定しなければいけませんが、折板屋根は施工する際に野地板が不要となります。
折板屋根はタイトフレームと呼ばれる金具を使って設置することができるため、とにかく施工がしやすく工事期間を短縮することができるのです。
屋根が大きければ大きいほど折板屋根は手間が少なくなるため、他の屋根と比べると工期の短さが際立ってきます。
さらにその加工の自由度によって東京ビッグサイトや西武ドームのように湾曲加工をして設置するということも可能になっています。
軽量でありながら耐久性が高い
ガルバリウム鋼板などの金属製の屋根材は耐久性が高く、屋根の強度を上げる効果が期待できます。
また、とにかく軽量であることから耐震性能を向上させる効果も期待できるため、近年の地震に対する備えとしても対応しやすいものとなっています。
耐用年数が20~30年ほどとなっているため、昔のトタン屋根よりも長くなっており、メンテナンスコストの面からも優秀だと言えます。
水はけが良く、雨水が溜まらない
折板屋根はその形状から水が流れていきやすくなっています。
そのため、雨が降っても屋根に水が残るということがなく、優れた水はけ能力だと言えます。
これが雨漏りなどを減らす理由にもなっています。
折板屋根のデメリットとは
メリットが多い折板屋根ですが、いくつかのデメリットもあります。
実際に使用する際にはそういったデメリットを踏まえて使用する必要があります。
錆びやすいため、塗装メンテナンスが必要となる
折板屋根はガルバリウム鋼板などの金属屋根となっているため「錆びやすい」という弱点は避けられません。
雨が降ってそのままにしていると錆びが出てきます。
錆びが発生すると穴が開いて雨漏りの原因となってしまうために定期的に塗装メンテナンスが必要となります。
また、折板屋根は屋根が大きくて勾配が緩やかなことが多くなりますが、その分だけ錆びを進行させやすい落ち葉や木材などが屋根の上に残りやすくなります。
こうしたことも折板屋根が錆びやすいことの理由となっていると言えます。
断熱性が低い
折板屋根は野地板を葺いていないために屋根裏という部分がありません。
そのため屋根には金属板1枚があるだけとなりますので、室内に外気が届きやすい環境となります。
さらに金属屋根は熱伝導率が良いために夏場は室内が暑くなり、冬場は室内が寒くなるということが多くなります。
冬場にストーブなどで室内を暖めると天井部分に大量の結露が発生するということもあります。
このように断熱性が低いというデメリットがあるのです。
これの対策としては、
・断熱効果を高めた製品を使う
・断熱材と屋根材が一体化された製品を使う
・金属屋根を二重にして間に断熱材を挟み込む
といった方法がありますが、どれも費用がかかってきます。
雨音が響きやすい
金属屋根の特徴ですが、雨の音が響きやすいということがあります。
特に折板屋根は薄い金属の板なので、強い雨が降ると衝撃音が反響してしまうということがあるのです。
この対策としては遮音テープを貼ったり、防振材を貼るといった方法があります。
音が気になるという場合にはこれらを試してみましょう。
折板屋根のメンテナンス方法と費用の目安
折板屋根は経年劣化によって錆びてしまったりすることがありますので、定期的にメンテナンスをする必要があります。
ここでは折板屋根のメンテナンス方法とかかってくる費用の目安について紹介していきます。
塗装工事
塗装工事はまず屋根の上の汚れ、ゴミなどを取り除き、その上から塗料を塗っていく作業です。
定期的なメンテナンスとして行われることが多く、「屋根の色褪せ」「表面の薄い錆び」「見た目の復活」などの役割をするだけでなく、使用する塗料によっては防水、防汚コーティングの役割をすることもあります。
工事としては軽い部類に入るため、工期も短く、費用も安めになっています。
ただ、この塗装という方法は大きく錆びていない、雨漏りがしていないといったことが条件となります。
劣化が進んでいる場合にはこの方法は使うことができません。
費用の相場:1㎡あたり 4000~7000円程度
カバー工法
カバー工法とは既存の屋根を撤去することなく、その上から新しい屋根材を設置するという工法です。
ほとんどの部分で屋根が二重に設置されることとなるため、断熱性や防水性が高くなるというメリットがあります。
すでに雨漏りがしている場合は、まず雨漏りの補修を行い、その屋根の上に防水シートを敷いて、その上に新しい屋根材を設置していきます。
メリットも大きい工法ですが、屋根が二重になるために「屋根が重くなる」というデメリットがあります。
重量が気になる場合は事前に確認が必要です。
また、建物の形状や状態によってはカバー工法が利用できないということもあります。
費用の相場:1㎡あたり 5000~8000円程度
葺き替え
葺き替えは既存の屋根をすべて撤去した上で、新しく屋根を設置していくという工法です。
新しい屋根材を設置するために耐用年数が長くなるといった効果が期待できますが、
・既存の屋根の撤去費用、処分費用が発生する
・工期が長くなる
といったデメリットがあります。
屋根のリフォーム工事の中ではもっとも費用がかかる工法となるので注意が必要です。
基本的にこの工法が利用されるのは屋根全体が劣化していて、一部を補修するだけでは間に合わないという場合です。
定期的に屋根のメンテナンスが行われている場合は必要ないことがあります。
劣化している部分はできるだけ早く補修をしていくことが重要だと言えます。
費用の相場:1㎡あたり 13000~18000円程度
折板屋根の施工事例
ここでは、弊社「株式会社エーストラスト」による折板屋根の施工事例を紹介します。
和泉市にて雨漏りに伴う大型倉庫の折板屋根修理
現場住所 | 和泉市 |
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施工内容 | 雨漏り修理 |
施工箇所 | 屋根の明かり取り |
こちらのお客様は、FRP明かり取りから雨漏りが起こっている状態でした。以前、他業者に修理をしてもらったそうですが雨漏りがおさまらず、弊社にご依頼いただきました。
施工実績の詳細は下記をご覧ください。
和泉市にて雨漏りに伴う大型倉庫の折板屋根修理
現場住所 | 泉大津市 |
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施工内容 | 重ねルーフ工法 |
使用屋根材 | ガルバリウム88折板 |
こちらのお客様は、全体的にサビがひどく、またボルトのパッキンの劣化や、屋根自体の劣化により雨漏りしている状態です。また、ところどころにオーナー様自らシリコン処置をした跡が見受けられます。しかし、全体的に劣化が激しいこともあり残念ながら雨漏りはなおらずじまい。そのため、今回は既存の折板屋根をめくらずガルバリウム素材のカバー工法をご提案いたしました。
施工実績の詳細は下記をご覧ください。
まとめ
折板屋根はガルバリウム鋼板などの金属屋根であり、その優れた耐久性や施工性の高さから幅広く利用されている屋根です。
工場や倉庫の屋根、車庫、駐輪場、ベランダなどで使われることが多く、最近ではDIYで屋根を作成するという人もいます。
また、1枚の屋根を大きく使うことができるので工期が短く、費用も安くなるというメリットがあります。
断熱性が低いといったデメリットはありますが、それを上回るメリットが多いために利用されることが多い屋根だと言えるでしょう。