屋根修理の減価償却について解説
2023/05/08
事業をおこなっている場合、屋根修理代を経費に計上したいことも多いでしょう。
実は、経費に計上できるかどうかは、「修繕費」「資本的支出」のどちらに該当するかによって変わってきます。
屋根修理の減価償却についての基礎知識や会計処理について詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
屋根修理は「修繕費」「資本的支出」のどっち?
まずは、修繕費と資本的支出の違いや、会計処理についての扱いからお伝えします。
そのうえで、屋根修理がどちらに該当するかを見ていきましょう。
修繕費
修繕費を簡単に説明すると、
- ・資産の維持や管理に必要な修理
- ・壊れた部分の修理に必要な費用
のことを指します。
※上記に、さらにプラスαの工事を付け加えた場合は、修繕費ではなく資本的支出になります。
会計処理については、工事をおこなった年にまとめて全額計上します。
屋根修理を「修繕費」として計上するためには、原状回復や維持管理の範囲内でなければなりません。
たとえば、
- ・既存の屋根材と同じ屋根材に葺き替える
- ・コーキングが劣化した部分を修理する
- ・自然災害で屋根が破損してしまった
- ・屋根の経年劣化
- ・雨漏りの修理
- ・陸屋根の防水工事
- ・劣化による外壁塗り替え
- ・外壁のヒビ割れ補修
などです。
資本的支出
資本的支出を簡単に説明すると、資産の耐久性や価値を高めるような工事のことです。「この工事をしたことで建物の価値が上がった」とみなされるような工事なら、資本的支出に該当するでしょう。
たとえば、
- ・耐用年数の長い部材に変える(トタン⇒瓦など)
- ・部分的な葺き替えで済むのに全面葺き替える
- ・建物内のバリアフリー化
- ・建物増築
- ・車庫を居住スペースとしてリフォーム
- ・外壁塗装
などが挙げられます。
会計処理については、耐用年数に応じて毎年減価償却で計算します。
たとえば新しい屋根材の耐用年数が15年の場合、工事をした日から15年間にわたり毎年少しずつ計上しなければなりません。
修繕費?資本的支出?判断に迷うときは
屋根修理の内容はさまざまです。
工事によっては、「修繕費なのか資本的支出なのかわからない」ということもあるでしょう。
このような場合に備えて、国税庁では「形式基準」を定めています。
判断に迷ったときは、以下を参考にすると良いでしょう。
それでも難しい場合は、税理士さんや税務署に相談してください。
■確実に修繕費に該当する
- ・工事の周期が3年以内
- ・工事費用が20万円未満
■判断が難しい場合は修繕費として計上する
- ・取得価格が前回の決算時の10%以下 (※取得価格……建物本体の価格に税金類を加えた価格のこと)
- ・工事費用が60万円未満
屋根修理の減価償却費はどのように計算する?
では、屋根修理をおこない、それを減価償却で計上していく場合、具体的な計算方法について見ていきましょう。
計算方法は「定額法」「定率法」のいずれかが使われます。
定額法
定額法は、毎年一定の金額を減価償却費として計上する計算方法です。
計算式は、「取得原価×定額法の償却率」
この「償却率」については、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」における、別表七・別表八で確認できます。
一例として、屋根修理の資本的支出が60万円だった場合について計算します。
仕訳例
- ・借方:建築物等600,000円
- ・貸方:当座預金600,000円
では、この金額を元に減価償却していきましょう。
資本的支出60万円に対して、耐用年数20年の償却率0.05を適用して、毎年3万円を経費として計上します。
<直接法>
- ・借方:減価償却費30,000円
- ・貸方:建築物等30,000円
<間接法>
- ・借方:減価償却費30,000円
- ・貸方:減価償却累計額30,000円
定率法
定率法は、償却の初期に、減価償却費を多く計上する計算方法です。
屋根修理を経て機能性や見た目がもっとも良い時期に償却費の多くを計上することで、後の償却費を低減させていきます。
計算式は、(取得原価―減価償却累計額)×定率法の償却率
この「償却率」については、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表十・別表十一で確認できます。
一例として、屋根修理の資本的支出が60万円だった場合について計算します。(※平成24年4月以降に取得した、耐用年数20年の建物。定率法償却率は0.112)
仕訳例
- ・借方:建築物等600,000円
- ・貸方:当座預金600,000円
では、この金額を元に償却費の推移を見ていきましょう。
<初年度>
計算式:600,000×0.112
償却費:67,200
翌年度期首価額:532,800
<2年目>
計算式:532,800×0.112
償却費:59,674
翌年度期首価額:473,126
<3年目>
計算式:473,126×0.112
償却費:52,990
翌年度期首価額:420,136
<4年目>
計算式:420,136×0.112
償却費:47,055
翌年度期首価額:373,081
※5年目以降も同じように続きます。
仕訳例
- ・借方:建築物等600,000円
- ・貸方:当座預金600,000円
<直接法> ※定率法で計算した初年度の場合
- ・借方:減価償却費600,000円
- ・貸方:建築物等600,000円
<間接法>
- ・借方:減価償却費67,200円
- ・貸方:減価償却累計額67,200円
減価償却で特例が使えるって本当?
屋根修理にはまとまった費用が必要になることもあるので、今後のことも考えるとできるだけ節税したいですよね。
青色申告をしている事業者(中小企業や個人事業主)の場合、30万円以下なら経費として処理できます。ただし以下の点にご注意ください。
- ・償却資産申告書には工事の内容を記載する
- ・役所に申告するとき(決算申告や確定申告など)は少額減価償却資産の明細を添付する
また、屋根全体の修理において、修繕費か資本的支出かで迷った場合は、
- ・「支払った金額の30%」「その建物の前年度の取得費の10%」のうち、少ない方を修繕費として処理できる
- ・上記で残った金額は、資本的支出として減価償却できる
という計算もできます。
資本的支出は、「トータルの費用-修繕費」でも計算できます。
たとえば、屋根修理において本来なら300万円で済む工事を、グレードの高い部材を使うことで500万円支払ったというケース。トータル500万円のうち、300万円は修繕費として認められ、残りの200万円は資本的支出として計算されます。
ややこしいですが、ほとんどの場合、修繕費と資本的支出を厳しく使い分けたとしても、長期的に見ると「経費」として計上できる金額はそれほど変わらないともいわれています。
しかしどちらが金銭的に有利かといえば、修繕費でしょう。資本的支出だと、資産価値が上がると固定資産税がかかることがあるからです。
銀行から融資を受ける場合、銀行によっては決算書で“減価償却費”の有無を確認することもあるようです。減価償却をしている企業は、物事を計画的にすすめられると高評価を得られることもあるとか。どちらが良い・悪い、どちらがおすすめか、などは一概に言えませんが、今の会社の状況や将来的な目標などを参考に「修繕費」「資本的支出」をうまく使い分けながら事業をすすめていきましょう。
困ったことがあったら、税理士さんや税務署に相談してくださいね。
まとめ
屋根修理の費用は、工事内容によって「修繕費」「資本的支出」のいずれかに該当します。
原状回復を目的とした工事なら修繕費ですが、建物の性能やグレードを上げるような工事は資本的支出となります。
どちらで計上するのかは、会社の状況や目標などケースバイケース。困ったときは専門家に相談して、かしこく節税していきましょう。
エーストラストは、屋根修理に多くの実績があります。
専門の職人が屋根の状態を見ながら丁寧に施工するので、リフォームや修繕をお考えの際はどうぞお気軽にお声がけください。