モニエル瓦の特徴と修理方法について解説
2024/03/27
日本ではまだまだ瓦屋根の住宅も多くなっていますが、その瓦にも色々な種類があります。
それぞれの瓦によって特徴も違うので、瓦屋根を使用する場合はそれらを理解した上で選んでいくと失敗しないでしょう。
そこでここでは「モニエル瓦」の特徴や修理方法について紹介していきたいと思います。
モニエル瓦の概要
モニエル瓦は日本の建設資材メーカーがオーストラリアのモニエル社と共同で開発したセメント瓦です。
商品の正式名称は「乾式コンクリート瓦」というのですが、社名である「モニエル」の名前で呼ばれることがほとんどとなっています。
主成分はセメントと川砂となっているため、瓦本体には防水性がありません。
表面に防水機能を持った塗装を行うことで製品となります。
非常に人気を誇ったモニエル瓦ですが、2010年にメーカーが解散したため、生産は終了しています。
モニエル瓦の特徴
成分としてはセメント瓦に近いのですが、もっとも大きな違いとして「着色スラリー」と呼ばれる着色剤が分厚く塗られているということがあります。
「スラリー」はセメントの原料である石灰に粘土、水を加えて粉砕したもので、この着色スラリーを透明な塗料で覆うことでモニエル瓦はできています。
モニエル瓦は作成の際に陶器瓦のように高温で焼くという必要がないため、環境にやさしい瓦だとされています。
モニエル瓦の形状
モニエル瓦には大きく分けて4つの形状があります。
和型
こちらは一般的な瓦の形状をしています。
波うったような滑らかな曲線の瓦となっており、湾曲していることで通気性が確保されています。
通気性を高めることで建物内部に外気温を伝わりにくくするという効果もあります。
曲線の形状によって雨や雪を自然に流していくという効果も期待できます。
洋型
こちらはより立体的な形状をしています。
その独特の形状のために和風な建物よりも洋風な建物で多く使われました。
平型
その名前の通りに平たい形状をしており、凹凸があまりありません。
面が広く見えるため、屋根全体が広く見えるという効果があります。
和風、洋風を問わず利用されました。
S型
大きく波打った形状となっており、デザイン性、通気性、断熱性に優れた形状となっています。
南欧風の瓦となっており、そういった建物によく合います。
モニエル瓦のメリット
広く利用されたモニエル瓦にはそれだけの利用メリットがあります。
ここではそんなメリットについて紹介していきます。
大雨、強風に強い
モニエル瓦は一般的なセメント瓦と違って着色スラリーが厚く塗られているということで、大雨や強風に対する強度が高くなっています。
こうした耐久性だけでなく、防水性や耐火性も高くなっていることから「災害に強い瓦」と言われています。
断熱性、防音性が高い
モニエル瓦は分厚く、強度のある瓦ということもあって強い日差しも通さないという断熱性、遮熱性が高くなっています。
ここでしっかりと熱を食い止めるため、建物内にまで高温にならないようにすることが可能なのです。
また、その分厚さで防音性も高くなっており、雨音が響くということもありません。
美観が良い
モニエル瓦は洋型やS型などデザイン性が高い形状のものもある瓦です。
さらに着色スラリーを使用していることから色彩的にも豊かとなっており、美観が整っているという強みもあります。
モニエル瓦のデメリット
モニエル瓦は扱いやすく、メリットの多い瓦ではありますが、実際に利用する際にはいくつかのデメリットもあります。
ここではそれらのデメリットを紹介していきます。
重量がかなり重い
近年、耐震性を高めるために「屋根を軽くする」ということが活発になっています。
屋根が軽い方が地震があった際に揺れ幅が小さくなり、柱や壁にかかる負担も小さくなるためです。
そのため、耐震工事を行う時には軽い屋根材である金属屋根などに交換することも多くなっています。
しかしモニエル瓦はセメントや川砂などが主成分のもののため、非常に重いという特徴があります。
金属屋根と比べると8~10倍の重さがあります。
そのため、屋根を軽くしたい、耐震性を高めたいという場合には向いていない屋根材だと言えます。
定期的なメンテナンスが必要
モニエル瓦の表面にはスラリー層があるのですが、このスラリー層が劣化してくると表面が粉っぽくなってきます。
その状態で塗装を行うと古くなったスラリー層が剥がれ落ちる時に塗装もまとめて剥がれてしまうこととなります。
また、モニエル瓦自体には防水性がなく、塗装することによって瓦が守られています。
この塗装が薄くなる、剥がれるという状態になると瓦本体に水が染み込んでいってしまうこととなります。
そのため、定期的な塗装メンテナンスを行う必要がある瓦となっているのです。
カバー工法ができない
屋根材の補修工事の際には「塗装」「カバー工法」「葺き替え」という種類があります。
カバー工法は既存の屋根を撤去せずにその上から新しい屋根を作るというもので、撤去する時間や手間、費用がかからないということで人気の工法となっています。
また、屋根が二重になることによって断熱性や遮音性が上がるといったメリットもあります。
しかし既存の屋根材にモニエル瓦を使用している場合は、屋根が重くなるという理由によってカバー工法を利用することができません。
屋根材を変えたい、屋根を新しくしたいという場合には「葺き替え」しか選択肢がないということになります。
モニエル瓦の耐用年数と劣化症状
モニエル瓦は一般的な屋根材と比べると耐用年数が長いものとなっています。
たいていは20年ほどの耐用年数がありますが、定期的なメンテナンスは必要です。
また、耐用年数が経過する前でも劣化症状が出てきた場合には補修や交換が必要となります。
ここではどういった劣化症状が出てくるのかについて紹介していきます。
ひび割れがしている、亀裂が入っている
モニエル瓦がひび割れしている、亀裂が入っているという場合はコーキングなどで補修を行うことができます。
ただ、大きなひびが入っている場合や割れている、欠けているという場合はそこから水分が入って劣化していくため交換しなければなりません。
瓦がズレてしまっている
地震や台風などによって瓦がズレてしまうと、その瓦が開いた部分から雨水が入ってしまいます。
下地が劣化したり、雨漏りの原因にもなるためすぐに対応が必要です。
瓦を元の位置に戻して固定するのですが、その際に破損していないか、欠けていないかを確認するようにしましょう。
塗膜の劣化が起きている
モニエル瓦は塗装をする必要がある瓦です。
そのため、この塗装が劣化してくるということがあります。
塗膜が薄くなっている、剥がれているという時には塗装メンテナンスを行う必要があります。
塗装が剥がれるとそこから水分が入り込み、苔や藻が発生する場合があります。
また、塗膜が劣化すると白っぽい粉のようなものが出てくる現象(チョーキング現象)が起きる場合があります。
この状態を放置すると雨水などが瓦に染み込んでいってしまい、瓦の劣化が進むこととなります。
モニエル瓦の修理方法、メンテナンス方法、交換費用
モニエル瓦の修理方法には大きく分けて「塗装」「部分補修」「葺き替え」という3つの種類があります。
ここではそれぞれの方法とその費用について紹介していきます。
塗装メンテナンスについて
モニエル瓦は塗膜が劣化してくるため塗装メンテナンスを定期的に行う必要があります。
一般的には50~100万円前後の塗装費用がかかります。
業者によっては、この費用にすべて含まれる場合と、足場代や高圧洗浄料金などが含まれない場合がありますので、事前に確認しておきましょう。
部分補修について
瓦を固定している漆喰の補修や瓦が1枚だけ割れているというような場合は部分補修を行うこととなります。
漆喰を部分的に補修するだけであれば数万円程度、大規模に漆喰を補修する場合は数十万円程度がかかってきます。
また、瓦は1枚交換するあたり3万円前後の費用がかかります。
漆喰がズレている、劣化しているというのを放置していると瓦が固定されなくなって落下したりすることにつながりますので、しっかりとメンテナンスを行うようにしましょう。
瓦についても割れているのが1枚だけだからと放置しているとそこから雨漏りの原因になる場合もあります。
この場合もできるだけ早く補修しましょう。
葺き替え
一般的に葺き替える際には既存の屋根材をすべて撤去して新しい屋根材を設置していきます。
しかしモニエル瓦の場合はすでにメーカーが生産を終了しているため、葺き替える場合は違う屋根材を選ぶ必要があります。
費用についてはどんな屋根材を選ぶかによって変わってきます。
違う素材の瓦屋根にするのか、金属屋根にするのかなどで選んでいくこととなるでしょう。
一般的には150~300万円前後の費用がかかることとなります。
また、葺き替えの場合は撤去や清掃などの手間がかかってくるため、工期も長くなります。
これは、足場の組み立て、養生シートの設置、既存屋根材の撤去、下地処理、屋根材の設置、足場の解体、清掃などの作業が必要となるためです。
まとめ
モニエル瓦はその扱いやすさから手広く利用された瓦屋根です。
ただ、塗装がされている瓦ですので、塗装メンテナンスを定期的に行う必要がある瓦でもあります。
また、すでにメーカーが生産を終了しているため、新しくモニエル瓦を設置するということができません。
葺き替える際にも別の屋根材を選ぶ必要があるということを覚えておきましょう。