瓦屋根の漆喰とは?劣化症状やメンテナンス方法について
2024/02/27
日本で昔からある屋根材「瓦屋根」ですが、その設置にはセットのように「漆喰」が必要となります。
瓦屋根は耐用年数が長く、それ自体はメンテナンスの必要があまりないのですが、この漆喰は定期的にメンテナンスを行うことが必要となります。
そこでここでは瓦屋根とともに使用される「漆喰」の概要、劣化症状、メンテナンス方法などについて紹介していきたいと思います。
漆喰とは
漆喰の中にもいくつかの種類があり、細かく言えば素材、材料が違っています。
基本的な漆喰は「石灰石」「水」を混ぜて練り合わせてできた「水酸化カルシウム」を原料としています。
この水酸化カルシウムを主原料として「苆」「粘土」「布海苔」などを混ぜ合わせていき、練り込んでいくことで漆喰が出来上がります。
日本でも昔から使用されている漆喰ですが、世界中でも昔から利用されている建築材でもあります。
単純に屋根を固定するために利用するだけでなく、石材の接着剤として、外壁材として、目地の充填剤として幅広く使われているのです。
日本では瓦屋根を固定するためだけに使うのではなく、外壁材としても使われており城、神社、寺院などで多く使われています。
漆喰の種類
漆喰の中にもいくつかの種類があり、それぞれ特徴があるため用途によって使い分けがなされています。
それぞれの種類の特徴を押さえ、適切なものを選んでいくと良いでしょう。
種類ごとの概要と特徴について紹介していきます。
本漆喰
ふつうに「漆喰」という場合はこの漆喰を指すのが一般的です。
昔から作られている漆喰でもあり、塩焼き消石灰、布海苔、苆、粘土などを水で混ぜ合わせて練り込むことで作成されています。
瓦屋根の固定や外壁材などとしても多く使われています。
土佐漆喰
土佐漆喰とは塩焼き消石灰に発酵させたワラ、水を混ぜ合わせて作成する漆喰です。
土佐漆喰は太陽光、紫外線に当たることで色合いが薄い黄色から茶色へと徐々に変色していきます。
段階的に変化していく色合いを気に入って土佐漆喰を選ぶという人もいます。
この土佐漆喰は耐久性が高いという特徴もあるため、天井や床などにも使用されている漆喰です。
琉球漆喰
その名前の通り沖縄で多く使われている漆喰です。
現地では「ムーチー」「ムチ」と呼ばれることがあります。
これらの言葉は沖縄の方言で「餅」を意味しています。
消石灰とワラと水を混ぜて作るという製法は他の漆喰と同じですが、こちらの漆喰は土佐漆喰よりもワラを多く混ぜるのが特徴です。
沖縄では瓦屋根を固定するのに多く使用されています。
既調合漆喰
塩焼き消石灰に海藻、海苔、炭酸カルシウムなどを混ぜて作るものです。
比較的最近多く使われるようになってきている漆喰で、こちらの漆喰の中には合成樹脂や化学繊維が入ったものもあり、化学物質を混ぜて作成するという場合が多くなっています。
漆喰の用途、役割
幅広い用途で使用される漆喰ですが、日本では屋根で使用されることが多くなっています。
ここでは漆喰がどういった用途で使用されているのかについて紹介していきます。
まず「瓦屋根を固定する」「瓦と瓦の間を埋める」「瓦同士を接着する」といった役割があります。
その他にはさまざま部材の隙間を埋めることで雨風、小動物、ゴミなどが建物内に入るのを防ぐという役割もありますし、外壁材として使用される場合もあります。
漆喰は劣化するとどんな問題がある?
瓦屋根の特徴としては「耐久性が高い」「耐用年数が長い」「重い」といったものがあります。
耐用年数が長いためメンテナンスを行う回数を減らせる、というメリットがあるのですが、その瓦屋根を支える漆喰は経年劣化していきますので、こちらのメンテナンスを行う必要があります。
そこでここでは漆喰の劣化について紹介していきます。
漆喰はなぜ劣化していくのか、どれくらいで劣化するのか
漆喰が劣化してくる理由、原因には色々なものがあります。
・長期間、屋根の上で雨風にさらされることで劣化する
・太陽光、紫外線を受け続けることで劣化する
・昼と夜、夏と冬などの季節や時間帯の気温差によって劣化する
・時間とともに経年劣化する
といったものが考えられます。
瓦屋根を支える漆喰は屋根の上にありますので、風雨や紫外線によるダメージを常に受けることとなります。
これらを長期間受け続けることによって劣化していくのです。
また、漆喰は長く使っていると乾燥して硬くなり、柔軟性がなくなるという特徴があります。
この状態になると風雨や紫外線のダメージをさらに受けやすくなりますので、劣化が早くなることとなります。
これらのダメージ以外にも長い時間が経つということによって経年劣化するという原因もあります。
漆喰が劣化してくることで発生する問題
では漆喰が劣化するとどういった問題が発生するのでしょうか。
屋根で瓦屋根を固定している漆喰が劣化することによって、瓦を固定している力が弱くなります。
瓦が移動する、ズレる、落下する、他の瓦にぶつかるといったことが発生してくるのです。
瓦がズレることで隙間ができてしまうとそこから雨水が浸入してしまうこととなり、雨漏りの原因となります。
また、瓦が落下するというのは瓦が重いため非常に危険です。
漆喰が劣化して固定力が弱まることでこれらの問題が発生してくるのです。
漆喰の劣化症状、劣化サイン
瓦屋根を支える漆喰は屋根の上に設置されているため、なかなか確認はしにくいのですが、漆喰が劣化してくると色々な劣化症状が出てきます。
これらの劣化症状、劣化サインが出てくると漆喰のメンテナンスを行う時期となっていますので、できるだけ早い対応が必要となります。
ここでは漆喰の劣化症状、劣化サインについて紹介していきます。
漆喰が浮いている、剥がれている、土が流れ出ている
漆喰が劣化してくると浮いてきたり、剥がれてきたりしてきます。
こうして漆喰が剥がれてしまうことによって隙間ができてしまい、そこから雨水が侵入すると内部の土が流れ出ていってしまうということがあります。
特に瓦屋根を設置している屋根では棟部分が屋根全体を支える土台となっている重要な部分です。
この棟から土が流れ出てしまうということは棟が不安定になる、変形してしまう、さらに雨水が侵入しやすくなるということにつながります。
棟がこれだけ被害を受けてしまうと屋根全体が不安定になってきますし、雨漏りなどの原因にもなっていきます。
屋根の下の地面に土が落ちていたりする場合は屋根から土から流出している可能性があります。
棟と瓦の間を支える漆喰が劣化している可能性があると言えるでしょう。
瓦がズレている、移動している、落下している
大雨や地震、台風といった自然災害によって瓦屋根がズレてしまったりして隙間ができる場合があります。
瓦屋根がズレて隙間ができることによってそこから雨水が侵入してしまいます。
雨水が侵入すると漆喰の劣化が早まっていきます。
漆喰が劣化してしまうと固定力、接着力が弱まってしまい、さらに瓦が大きくズレる、移動するということにつながります。
ズレが大きくなると瓦が落下してしまうということもあります。
その部分に瓦がなくなると雨水が直接土台部分、土部分に当たることとなり、土や漆喰などをまとめて流してしまうという危険性があります。
屋根を見た時に瓦がズレている、落下しているという場合はできるだけ早い対応が必要となります。
すでに雨漏りが発生している
すでに雨漏りが発生している場合は漆喰がかなり劣化している可能性があります。
建物内に雨漏りがしているという場合は屋根材の部分だけでなく、その下に設置されている「ルーフィング(防水紙)」も劣化しているという可能性があります。
一般的に屋根材を通過してしまった雨水はこのルーフィングによって防がれています。
つまりルーフィングが正常に稼働していれば雨漏りは防げるのです。
しかし建物内に雨漏りがしているということはこのルーフィングも劣化している、破損しているという可能性があります。
こうなると屋根材、漆喰、下地部分の野地板やルーフィングなどをまとめて交換しなければならないような大規模な補修工事が必要となります。
雨漏りが発生している場合は漆喰はもちろん、ルーフィングなど他の部材についても劣化しているということがあるのでより注意が必要だと言えます。
漆喰のメンテナンス方法
漆喰が劣化しているという場合にはメンテナンスが必要となります。
漆喰のメンテナンスは点検をして必要に応じて以下のような対応をとります。
漆喰の詰め直し
劣化している漆喰を取り除いて新しい漆喰を詰めていくという補修工事です。
部分的な補修となるので、数十万円程度の費用で済むことが多くなっています。
棟瓦の積み直しと漆喰の詰め直し
漆喰の劣化が激しい場合には一度棟瓦を外して漆喰や土などをすべて取り除き、土台から作り直して漆喰を詰め直すという作業が必要となります。
ここまで大規模な工事になるとある程度の期間と100~300万円程度の費用がかかることとなります。
まとめ
漆喰は世界中で長く使われている建材であり、日本でも昔から使われてきた瓦屋根の固定材です。
瓦屋根は耐用年数が50年以上あるものもあるのですが、漆喰は15年程度で劣化していきますので、完全に劣化して雨漏りなどが発生する前に定期的にメンテナンスを行うことで早い対応ができるようにしていきましょう。
当社で行った漆喰工事の事例