雪が引き起こす雨漏りとは?「すが漏り」について解説
2022/11/30
「すが漏り」という言葉をご存じでしょうか。
屋根上で雪がたまり、それが原因で屋内に雨漏りを発生させる、雨漏りの一種です。
「すが」という言葉は東北地方で「氷」を意味します。雪が溶けて水になり、その水が軒先で氷になり、雨漏りの原因になります。
北陸や日本海側に多いすが漏りについて解説します。
すが漏りはなぜ起こるのか
すが漏りは、屋根に特段の不具合や異常がなくても起こり得る可能性がある雨漏りです。
ひと言でいうと、「軒先に溜まった雪のせき止めによる雨漏り」といえます。
どのようないきさつで、すが漏りに至るのか、みていきましょう。
雪が降って屋根に積もる
一定以上の雪が降り、それなりに気温が低ければ、当然屋根に雪が積もります。
しかし、ここまでは屋根の積雪としてよくあることです。積もった雪が滑り落ちることなく、屋根上にそのまま残っている場合です。
屋内の暖房の熱が内側から屋根へ伝わる
エアコンやストーブなどの熱が天井裏を通じて屋根の下地へ至り、内側から屋根を温める形になります。ただし、伝わるのは建物の外壁までの部分で、軒先に近い屋根の部分は暖められません。
屋根の雪が少しずつ溶ける
もちろん室内よりはずいぶん低い温度ですが、外気と比べればかなり暖かく、ゆっくりと屋根の雪を溶かします。溶けた水は勾配によって軒先へ流れていきます。
暖められていない軒先で氷になる
冷えた状態の軒先へゆっくり流れた水は、ふたたび冷やされ、氷になり固まります。
固まった氷が水をせき止めてしまう
固まった氷は、流れてくる水をせき止めてしまい、さらに固まるか、水を貯めた状態となります。
水が溜まって屋根材のハゼから雨漏りする
水が溜まると、屋根材の接合部である縦ハゼや横ハゼから浸水します。ハゼは上から流れてくる水に対しては排水できますが、溜まったり吹き上げられた水に対してはすべてを排水することは困難です。
すが漏りが起こりやすい屋根は
勾配が緩い屋根
そもそも屋根に雪が溜まることからはじまるので、積もった雪が滑り落ちてしまえば問題ないのですが、ある程度の勾配が必要になります。おおよそ5寸から6寸以上の勾配があれば滑り落ちやすくなりますが、屋根材の材料や雪質にも左右されるため一概にはいえません。
また、地面へ滑り落ちた雪は庭先や玄関先に溜まることになりますので、邪魔になるかもしれません。
軒先に雪止めが設置されている
勾配が強くても、雪止め金具が設置されていれば雪は屋根に溜まります。特に軒先であれば雪が溶けるまで溜まり続けてしまいます。とはいえ、雪止め金具を付けているということは雪が落ちてきては困るために設置してあるはずなので、どちらが重要かを慎重に判断する必要があります。
屋根、建物の築年数が経っている
屋根が古い場合は、屋根材にもよりますが20年程度経っているとすると屋根材などの傷み、劣化もあり、防水機能が低下していることも考えられます。
また、断熱性能の低い古い建物では暖房の熱が伝わりやすく、屋根上の雪を溶かしやすくなってしまいます。
すが漏りを防ぐには
雪おろし
すが漏りを起こしやすい屋根である場合で、勾配も簡単に変えられませんし、雪止めも外せない場合、雪下ろしをするしかなくなります。しかし、雪が降り続く中、屋根に上って雪下ろしをするのは大変ですし、まず危険が伴ってしまいます。
軒先融雪など
費用はかかりますが、防水性能の高い水密工法で屋根を施工するという方法はあります。費用面でもっとも安価に抑えることを考えると、融雪システムがあります。屋根面に加熱式の樹脂のヒーターなどを貼っていくという方法です。軒先を重点的に対策することで、すが漏りを防げる可能性があります。
まとめ
すが漏りについて解説してきました。平野部ではほとんど心配ありませんが、豪雪エリアでは毎年深刻な問題です。できれば、建物を建てる段階で屋根の勾配や形などに注意をしながら設計していきたいです。
雪害はすが漏り以外にも、屋根の上に雪が積もることによって想像以上に重量がかかることで建物に負担がかかっています。玄関にだけは雪が落ちないようにして、なるべく地面に雪を滑り落とすようにするのがもっとも良い形のようです。